パン職人が届ける一瞬の美味しさ ― 焼きたての風味を守る瞬間凍結技術

私がパン職人として、最も大切にしているのは「一瞬の美味しさ」を届けることです。焼きたてのパンを手にしたとき、その香りと温もりは、まるで命が宿っているかのように感じます。しかしその輝きは、瞬く間に過ぎ去ってしまう。パンが持つこの「儚さ」とどう向き合うかが、私のこだわりです。

そこでたどり着いたのが「ブラストチラー」と呼ばれる急速冷凍の機械を使った瞬間凍結の技術。焼きたての温かさを保ったまま急速冷凍することで、パンが持つ風味や食感をそのまま閉じ込めるのです。パンは生きている食品であり、焼き上がりの瞬間から劣化が始まります。時間の経過とともにグルテンが水分を手放し、乾燥していく。私にとってその一瞬を凍らせるのは、パンへの愛情であり、お客様に最高の状態を届けたいという願いそのものです。

この手間を惜しまずに「一瞬の美味しさ」を守ることが、私のパン作りの流儀。見えないところで時間と戦いながら、パン職人としての誇りをかけて、その儚さを閉じ込める作業に心を込めています。美味しさを守るために、今日も冷凍庫の前で一瞬に挑む。それが私の使命であり、日々の糧でもあるのです。