パンと菓子の職人ノート

パン屋こそパニーニメーカーを活用したい|焼きたてパニーニが商売を変える

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パン屋こそ、パニーニを焼きたてで販売すべきだ。


パン屋にとって「焼きたて」という言葉ほど強いものはない。

焼きたての食パン、焼きたてのクロワッサン、焼きたてのフランスパン。オーブンから出てきた瞬間の香りに誘われて、予定になかったパンまで買ってしまった経験がある人は多いだろう。

ところが、これをサンドイッチにまで広げているパン屋は、意外に少ない。

そこで私が強く勧めたいのが、パニーニメーカーを使い、注文を受けてから焼き上げるパニーニだ。

パニーニは、パンにハムやチーズ、野菜などを挟み、専用の鉄板で加熱して仕上げるイタリア生まれの温かいサンドイッチだ。波型の鉄板で焼くことで表面に独特の焼き目が付き、外側は香ばしく、中にはパンのもちっとした食感が残る。さらにチーズは溶け、具材も温まり、それぞれの香りが立ち上がる。

これが、冷たいサンドイッチとは決定的に違う。

目の前で焼く。それだけで「商品」が「体験」になる

私が42歳のころ、パニーニを商売に取り入れたことがある。

最初は単純に「温かいサンドイッチなら少し高く売れるだろう」くらいに考えていた。

ところが実際にやってみると、一番大きかったのは味ではなかった。

焼いているところをお客さんに見せられることだった。

パンを鉄板に載せる。上からプレスする。

ジュッという音がする。

少しすると、パンとチーズとハムの香ばしい匂いが漂ってくる。

蓋を開ける。

表面にはくっきりと焼き目が付いている。

これを半分に切ると、中から溶けたチーズが伸びる。

これだけで、隣に並んでいる普通のサンドイッチとはまったく違う商品に見える。

私はそこで初めて気づいた。

パニーニは食べ物であると同時に、小さな実演販売なのだ。

パン屋はもともと「焼く」という圧倒的に強い武器を持っている。その武器を売場でもう一度使わない手はない。

300円のパンを売る発想から、「一食」を売る発想へ

パン屋の難しいところは、一人のお客さんにパンを何個買ってもらっても、客単価には限界があることだ。

しかしパニーニは違う。

ハム、モッツァレラ、トマトを挟んだパニーニ。

ローストチキンとチーズのパニーニ。

ベーコンと卵のパニーニ。

季節野菜を使ったパニーニ。

そこにコーヒーやスープを組み合わせれば、単なる「パン」ではなくランチ一食分の商品になる。

具材やパンの組み合わせを変えやすく、スープやサラダ、ドリンクとのセット販売もしやすい。つまりパニーニは、パン屋が客単価を上げるための商品として非常に組み立てやすい。

「パンをもう一個買ってください」とお願いするより、

「焼きたてのパニーニとコーヒーでランチはいかがですか」

と提案した方が、はるかに商売を組み立てやすい。

パニーニは、パン屋だからこそ面白い

しかも、パン屋には大きなアドバンテージがある。

パンそのものを自分たちで作れることだ。

チャバタでもいい。

フォカッチャでもいい。

小型のフランスパンでもいい。

店独自のパンを作ってもいい。

パニーニにはチャバタがよく使われるが、その理由の一つは、シンプルな味わいともっちりとした食感で、さまざまな具材に合わせやすいからだ。

つまりパン屋なら、「ハムとチーズを何に挟むか」というところから商品開発ができる。

これはカフェや一般の飲食店には簡単には真似できない。

昨日売れ残ったパンを使おう、という話ではない。むしろ逆だ。

パニーニ用のパンそのものを商品として設計する。

ここまでやると面白くなる。

「うちの店のパニーニは、このパンだからうまい」

という理由が生まれるからだ。

注文されてから数分。この短さが商売になる

焼きたて商品で問題になるのが提供時間だ。

注文を受けてから10分も15分も待たせる商品では、忙しい昼時には厳しい。

その点、パニーニは扱いやすい。

例えばサンテックコーポレーションのパニーニメーカーでは、ホットサンドなどを約1分30秒~3分で調理でき、1連式は一度に最大3本、2連式は最大6本を焼成できる。

これくらいの時間なら、注文を受けてから焼くことが現実的になってくる。

しかも、難しい調理技術を必要としない。

パンを用意する。

具材を挟む。

プレスする。

焼き上げる。

基本的な流れは非常にシンプルだ。複雑な仕込みや高度な調理技術を必要としにくく、短時間で安定した品質の商品を提供しやすいところも、パニーニの大きなメリットだ。

「ご注文をいただいてから焼きます」が最強のPOPになる

私自身、商売をやっていて強く感じたことがある。

商品の説明をいくら書いても、お客さんは全部は読まない。

「イタリア産○○使用」「厳選された○○」「職人こだわりの○○」。もちろん、こうした説明も大切だ。

しかし、

「ご注文をいただいてから焼きます」

これは強い。

説明がいらない。

しかも、本当に目の前で焼けばいい。

お客さんが待っている1分30秒から3分は、単なる待ち時間ではない。

焼けてくる音を聞く。

香りを嗅ぐ。

焼き上がるところを見る。

それ自体が商品の一部になる。

私がパニーニ商売をやったときも、最初は「待たせるのはマイナスだ」と考えていた。

ところが実際には逆だった。

焼いているのを見ていた別のお客さんから、

「それ、何ですか?」

と聞かれる。

「パニーニです。今焼いています」

と答える。

すると、

「じゃあ私もそれ」

となる。

私はこれを勝手に「パニーニ連鎖」と呼んでいた。

焼けば焼くほど、次が売れる。

少なくとも私には、ただ棚に完成品を並べていたときにはなかった感覚だった。

香りは、店頭で使える広告である

そして何より強いのが香りだ。

パン屋の前を歩いていて、パンを買う予定がなかったのに店に入ってしまう。

あれと同じことを、売場の中でも起こせる。

プレスされたパン。

溶けたチーズ。

ハムやベーコン。

オリーブオイル。

こうしたものが温められたときの香りは強い。

私は香りを「無料の広告」だと考えている。

しかも広告と違い、目の前の商品そのものから出てくる。

これほど説得力のある販促はなかなかない。

パニーニは「パン+具材」ではない

パニーニを導入するとき、「サンドイッチの種類を一つ増やす」と考えない方がいい。

それではもったいない。

店内で最後の仕上げをして提供する商品を一つ持つ。

そう考えた方がいい。

スーパーのパン売場ではなく、パン屋で買う理由。

コンビニのサンドイッチではなく、この店に来る理由。

通販ではなく、わざわざ店まで足を運ぶ理由。

その一つが「今ここで焼いたものを食べられる」ことではないだろうか。

パン屋は、焼きたてを売れる商売である。

せっかくオーブンからパンが出てくる店なのだから、その強みを午前中の焼成だけで終わらせてしまうのは惜しい。

午後になっても、夕方になっても、ジュッという音とともに商品を焼き始める。

香りが立つ。

お客さんが見る。

そして、

「それください」

と言う。

パニーニメーカー一台で起こしたいのは、単にサンドイッチを温めることではない。

パン屋の売場に、もう一度「焼きたての瞬間」を作ることだ。

私はそこに、パニーニ商売の一番大きな可能性があると思っている。